本エントリーでは、アクセプタンス&コミットメントセラピーの「心理的柔軟性」を示す6つのコア・プロセスの一つである、「コミットメント(コミットされた行為)」について掘り下げてみたいと思います。
コミットメントとは
コミットメントは、わかりやすくいうと「価値に向かう行動をだれかに伝えること」だと言えます。ちなみに、「価値」についての説明は別エントリーを設けてるので、詳しく知りたいという方はそちらをご覧ください。

例えば、「社会の一員であり続ける」という価値を持つ人にとって、「仕事をする」という行動は、その価値に向かう行動になるわけですが、それをだれかに表明するわけです。「僕は、社会の一員であるために、働きます」のようにです。口にするのです。それこそが「コミットメント」なのです。
コミットメントとは,困難な状況にあっても,価値に基づき,生きるために必要な行動をとることである(Harris, 2009)。結果として,適応的な行動が増え,不適応的な行動が減り,よりよく生きることが可能となる。
(引用:価値の明確化およびコミットメントが労働者の心理的 well-being に及ぼす影響より)
なぜコミットメントが重要か?
では、なぜコミットメントが重要かというと、その理由は2つあります。
- 「価値のコミット」が「ルール」として自分の行動に影響を与える
- 「ルール」には「仮初めの平穏をもたらす行動」弱める働きがある
1つずつ説明します。
価値(ルール)が行動に与える影響
もしかしたら自覚がないかもしれませんが、あなたはものすごく「自分ルール」に縛られて日々生活を送っています。
例えば、「~は、こうあるべきだ」とか「~なときは、こうしなければならない」という考え、あるいは、「私は○○な人間です」というようなものがルールにあたります。
- 「付き合ってたら、毎日連絡すべき」
- 「人は皆、正直でなければいけない」
- 「私は、意思が弱い」
- 「何をやってもダメ」
具体的には、こんな感じの内容のもがそれです。では、これらの「ルール」とやらは、どのように形成されてきたのでしょうか?多くの場合、それは「経験」によるものです。
例えば、「何をやってもダメ」ということは、「何かをやってきた」からそう思うのでしょうし、「人は皆、正直でなければいけない」というは、「嘘はよくない」と刷り込まれてきたからそう思うのでしょう。
しかし、それはあくまでも「ルール」であって、あなたの「今の、行動」を決定づけうるものではないはずです。
つまり、
- 「付き合っていても、連絡を取らないことはできる」
- 「人は皆、正直であるべきだけど、嘘をつくこともできる」
- 「私は、意思が弱いけど、1日5分ならけられる」
- 「何をやってもダメだけど、ダメじゃないこともある」
この様な行動も可能だということです。ですが、僕たち人間は、「付き合っていたら、毎日連絡を取ろうとする」し、「人は皆、正直であるべきだから、嘘をつかないよう努める」し、「私は意思が弱いから、何をやってもダメだからとすぐにあきらめる」という「ルール」に沿った行動をしてしまいがちです。
そして、その「ルール」から逸脱すると、罪悪感や悲しみ、あるいは怒りに苛まれます。他人 からみれば大した問題ではないにもかかわらずです。そして、そのような言わば「自分ルール」に固執すると、自らの生きるスペースを狭め、心理的柔軟性が失われることに繋がります。
このように、「ルール」には、自らの行動を縛りつける力があります。しかし、これはあくまでも悪い例な訳で、「ルール」にはそういった力があるということを理解すれば、それが良い方向に働くようなルールを形成すればいいということになりますね。その「良いルール」を、ACTでは「価値」とよぶわけです。
ルールには、目前の結果を弱める効果がある
なぜ「価値のコミット」が大事なのかということの2つ目の理由に、「価値(ルール)」には、目の前で起きた出来事に対する感受性を低下させる効果があるということである。
ルールは、刺激機能を変容して直接的随伴性よりも優位に立つ。これはルール支配行動の重要な利点であり、私たちに即座の満足をひとまず横に置いておく能力をもたらしてくれる。
(引用:関係フレーム理論(RFT)をまなぶ,p188)
さて、いかがでしたでしょうか?
今回は以上になりますが、僕はツイッターでも認知行動療法(ACT含む)に関する情報を発信してますので、気になった方は、↓↓ぜひフォローお願いします。
参考文献
①価値の明確化およびコミットメントが労働者の心理的well-beingに及ぼす影響(論文)
②関係フレーム理論(RFT)をまなぶ
③ACTをまなぶ セラピストのための機能的な臨床スキル・トレーニング・マニュアル
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