心理学研究は、医療分野に比べれば、研究者が直面する問題に、生死が関わるということは少ないと思われますが、そうは言っても、人間の行動を観察するという点で、そこには倫理的な問題が生じる可能性が常に孕んでいます。
ではどなんな問題があるのでしょうか?
初学者向けに、ここではさらっと概論を掴んでいただきたいと思います。
プライバシーと秘密保持の問題
1つは、「プライバシーの侵害」といった問題があります。
個人が事故の知的、あるいは行動的な、または身体的な側面を他の人と分かち合う程度やタイミングや状況などに関する事柄である
(引用:人間科学研究法ハンドブック,p37より)
他には、「秘密保持」の問題があります。
個人が開示した情報に関することで、本来の情報の開示にういての理解に相反する方法では許可なく他人に明かされることはない、という前提で開示される情報の扱いに関することである
(引用:人間科学研究法ハンドブック,p37より)
ですので、研究者は、このような観点において責任をもたないといけないわけです。
これは義務ですね。
質問紙調査をするときは特に注意
このような「プライバシー」や「秘密保持」の問題は、質問紙調査を実施する際に問題として生じやすいとされます。
例えば、研究テーマとして、性的・民族的なものなど極めて個人的なものを選択すると、そのような質問紙に回答することはあなただって苦痛に感じることもあるでしょう。
時にそれはプライバシーの問題となることがありえます。
あるいは、回答の問題がなかったとしても、それによって得られたデータが漏洩したとしたら被験者に別の不快感や羞恥心を与えかねません。
これは、秘密保持の倫理義務からの逸脱ですよね?
インフォームドコンセント
そこで、どんな研究をするにせよ、被験者に、その研究目的や概要を示し、参加の同意を求める必要があるわけです。
これが、いわゆるインフォームドコンセントというやつですね。
インフォームドコンセントは、極力書面で残すことが理想であるとされます。
それはもちろん、被験者を守るためですが、同時に研究者を守ることにも繋がるからです。
また、インフォームドコンセントを得るための説明には、相手に合わせた言葉を選びや、何時であろうと研究を離脱する自由があることを伝えねばなりません。
ディブリーフィングとディセプション
また、実験法を用いる場合に特有な倫理問題として、ディセプションが挙げられます。
まあ、ディセプションはただの手法なのですが、被験者に対して嘘の情報ないし、不完全な情報を与えて研究を進めることを言います。
要は「だます」ということです。
当然「だます」ということは、研究に参加してくれた方への敬意を損なうことになりかねないため、そのようなリスクを抱えてでもディセプションを取り入れるのは、それを上回る社会的価値があるということなのでしょうが・・・
とにかく、ディセプションを取り入れる際は、研究開始前に、被験者に生じるリスクを念入りに検討することはもちろん、ディブリーフィングによって、悪影響を軽減するよう細心の注意を払わねばならないということですね。
それがこの倫理問題に対するアプローチです。