人と関わる上で、自分の感情や考えを他者に表出することは重要であるが、世の中には、それが苦手な人が数多く存在する。そういう僕自身もそうなのだが、今回するアサーションは、
・感情表現が苦手
・目上の人間と話すとぎこちなくなる
・引っ込み思案、恥ずかしがり、
・社会的な価値観に縛られがち(愚痴はよくないこと、先生の言うことはいつも正解だ、男は/女はこうあるべきetc….)
・列に割り込まれても何も言えない
この様な人たちにこそ知ってほしい技術でもある。
目次
アサーション(主張訓練法)とは
アサーションとは、「自分も相手も大切にする自己表現」という意味を持つコミュニケーションの考え方と方法のことであるが、心理学的に言えば、古典的条件付けによって不安反応習慣を消失させる行動療法の1つである。
アサーションの目的と理論
アサーションは、他者に対して、不安以外の適切な情動表出ができる様になることであり、他の人々の行動に対して生じる不安反応を取り除き、別の情動表出を開発するために使われる。つまり、不安の身体的反応とは異なる身体的反応によって、その時に生じる不安を抑えこもうというわけだ。
例えば、”怒り”や”空腹感”などは、それが大きくなると、不安を制止する反応となりうる。その反応が起こることによって、不安反応の習慣が弱まる効果が期待される。同時に、怒りを表出することができ、そのことが上手く機能すると、その行動習慣はさらに強まるという好循環が生まれる。
仮に、初対面の人間から、「お前ムカつくね」と言われた時、非アサーティブな状態だと、”不安”の感情の程度が”怒り”の感情を上回っているために、”何も主張できない”のである。
一方、これがアサーティブな状態であるならば、”怒り”の感情の程度が大きくなり、不安を抑えこみ、その結果、”失礼な人ですね”とその怒りを表出できるのである。
ただし、主張訓練の本質は、正当で正しいことを他の人に対して行うことで、原因となっている対人不安を克服することにある。そのため、なんでもかんでも言いたいことを好き放題に言えばいいということではないという点に注意せねばならない。
アサーショントレーニングの準備
以上の原因と理論を理解した上で、アサーションを実施するためには、それが合理的であるということを受け入れる必要がある。なぜなら、他者の要求に従う行動は、時に、他者を自分より優先することが道徳的であるという、社会的な規範と結びついていることがあるからだ。
そのためには、アサーションがコミュニケーションの1つの形式であることを知り、それ以外のコミュニケーションタイプについて理解せねばならない。
3つのコミュニケーションタイプ
コミュニケーションタイプには以下の3つがある。
攻撃的自己表現
本来ならば頼むべきことを、自分自身のことだけを考えて、欲しいものを手に入れるために、命令したり、他者に威張り散らす。精神病質的パーソナリティはこれが極端に表れる。この場合は言わずもがな、問題が発生するが、立場を利用してこの様なコミュニケーションをとる輩もいる。
非主張的自己表現
頼んでもいいことを頼まなかったり、断ってもいい場合に引き受けてしまったりするコミュニケーションをとる。自分自身以前に他者を優先するということである。このタイプの人々は、情動的に混乱を起こすことが多々ある。また、このタイプは、自らが犠牲になるだけでなく、周囲の人も巻き込み、最終的に、関係を悪化させることもある。
アサーティブな表現
アサーションは双方を大切にするやり取りを考えであり、自分自身を最初に考えるが、他人も考慮する。自分自身の要求に応ずると共に、社会生活にも合わせるのである。双方が理解して、葛藤があるときは歩み寄るコミュニケーションだと言える。
アサーショントレーニングの具体的な手順
アサーショントレーニングを始めるのに適した状況は、最近あった出来事を患者が語ることから、とても自然に作られる。できることなら、ロールプレイ形式で、2人で行うのがファーストステップとしては望ましいのだが、片方がもう片方に感情を傷つける現実の状況について聞き、いかにしてその状況を切り抜けるかを続けて尋ねる。もし、そのやり方が主張的でなかったならば、それに代わる主張的な方法を提案するのである。