
ウェスクラー式知能検査のまとめ記事です。
ウェクスラー式知能検査
ウェクスラー式知能検査とは,知的能力ごとの診断を目的とした検査で、別名、診断的知能検査とも呼ばれる。子供から大人まで対応しているが,年齢によって3つの検査が用意されている。主に就学前児童を対象とするWPPSI(ウィプシ Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence),就学後児童を対象とするWISC(ウィスク Wechsler Intelligence Scale for Children),16歳以上の成人を対象とするWAIS(ウェイス Wechsler Adult Intelligence Scale)がある。各検査は改訂を経て,2019年現在日本では,WAIS-Ⅳ,WISC-Ⅳ,WPPSI-Ⅲが最新版として扱われている。
特徴
子供から大人まで対応しているが,年齢によって3つの検査が用意されている。主に就学前児童を対象とするWPPSI(ウィプシ Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence),就学後児童を対象とするWISC(ウィスク Wechsler Intelligence Scale for Children),16歳以上の成人を対象とするWAIS(ウェイス Wechsler Adult Intelligence Scale)がある。各検査は改訂を経て,2019年現在日本では,WAIS-Ⅳ,WISC-Ⅳ,WPPSI-Ⅲが最新版として扱われている。
ウェクスラー式知能検査の最大の特徴は,知能を複数の因子で構成されると考える点にある。一方,ウェクスラー式知能検査に先立って開発された知能検査に,ビネー式知能検査がある。この検査は,知能全般を測定することは可能だが,知的能力ごとの違いを把握することができない。つまり,知能を1因子と考える。その理由は,ビネー式知能検査が,知的障害児の早期発見を目的としていた点にあると考えられるが,ウェクスラーは,そのような点に注目し,複数の因子を測定すべくウェスクラー尺度を開発したのである。従って,ウェクスラー式知能検査で算出される項目について,渡部(1993)は,「個人内差も把握できるように言語性6種類,動作性5ないし6種類の下位検査で構成されるバッテリー形式をとっている。ウェクスラー式の知能検査の特徴は,言語性IQ,動作性IQ,言語性と動作性を総合した全検査IQの3種のIQが偏差IQとして求められる」と述べている。しかし,最新版のWAIS-ⅣやWISC―Ⅳでは,言語性IQと動作性IQに代わって,言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度の指標が算出される。
ディスクレパンシー
ウェスクラー式知能検査の関連用語。ディスクレパンシーとは、言語性IQと動作性IQの間に大きな差があるケースで、発達障害児によく見られる。
年齢別の検査
ウェスクラー式知能検査は、年齢別に専用の検査が存在する。
検査対象
概要で述べたとおり,ウェスクラー式知能検査は年齢ごとに検査内容が異なるが,WISC・WAISは多くの課題や注意点が共通しているため,本レポートではWISC-Ⅲを例として取り上げる。
第一に,準備段階として,検査用具,検査の手引機,ストップウォッチ,受験者用の鉛筆2本,検査者用の筆記用具の,以上5点を用意する。所用時間は60分から90分程度とされる。WISC-Ⅲは,知識,数唱,単語,算数,理解,類似,の6種類からなる言語性検査および,絵画完成,絵画配列,積木模倣,組合せ,符号,記号探し,迷路の7種類からなる動作性検査によって構成される。ただし,数唱,記号探し,迷路は補助検査として用いられる。また,記号探しと迷路はWAISにはなく,WISCに特有の下位検査である。
第二に,上記の下位検査を手引に従い,言語性検査と動作性検査を交互に出題する。具体的には,絵画完成(イラストの欠如を答えさせる),知識(一般知識を答えさせる),符号(ルールに従って符号を置き換えさせる),類似(言語で概念を2つ提示し共通点を答えさせる),絵画配列(複数の絵カードで物語を作る),算数(暗算させる),積木模倣(見本を参考に積木で同じ物を作る),単語(言葉の意味を答える),組合せ(断片を組み合わせて元の形を作る),理解(日常的な事象の理解を答えさせる)の順で実施する。また,WISC-Ⅲでは,ここまでの合計10下位検査を基本検査とし,先ほど述べた補助検査は,検査者に余裕がある場合や,被験者についてより詳しい情報を得たい場合など,必要に応じて用いられる。これもWISCに特有な部分であり,WAISには,基本検査と補助検査といった区別がない。また,具体的な検査の内容に関しては,「類似」であれば,ローソクと電灯の似ている点を答えさせる問題や,「理解」であれば,友達のボールをなくした状況での対応について答えさせる問題などがある。加えて,問題が進むごとにその難易度は上がる。例えば,「知識」の下位検査では,親指を示してその呼称を答えさせる問題が1問目で,24問目は,鉄が錆びる原因を答えさせるといった具合である。
第三に,下位検査を進行する手順として橋下・大木(1999)は,「『符号』と『組合せ』については,全被験者が全問題に解答するが,他の下位検査では,『5問連続したときに中止』(『知識』)というように,中止条件が決まっているので,その条件に従って下位検査を中止し,次の下位検査に移ることになる」と述べている。
最後に,この検査中に得られた,被験者の回答や行動を記録する必要がある。記録用紙には,氏名・年齢・検査日程はもちろんのこと,回答を記録する欄が用意されている。記録は,「回答は,P(pass;正答),f(fail ;誤答),Q(query;質問),DK(don’t know;『わかりません』),NR(no response;無反応),OT(over time; 時間超過)等の記号を用いながら,記録用紙に記入する」(糸田,2008)。