質的研究の定義、意義、特徴、留意点についてまとめました。
目次
質的研究の定義
質的研究とは、記述的なデータを用いて、言語的・概念的な分析を行う研究法をさす。”質的”とは、非数量的と言う意味であり、数量的測定に頼らない研究は広義の質的研究と言える。
仮説生成研究と仮説検証研究
ちなみに、研究分類には、仮説生成研究と仮説検証研究の2つがあり以下のように区別される。
仮説生成型研究
別名、ボトムアップ的研究と呼ばれる。仮説を立ち上げることそのものを目的とする研究。研究者とにとっての客観的真実を想定せず、研究対象者にとっての行為、経験、考え、意味を探求する。一般的には、仮説生成型の非数量的研究が、狭義の質的研究にあたる。
仮説検証型研究
別名トップダウン的研究と呼ばれる。先行研究に基づいて仮説を設定し、それを検証することによって、既存の理論を精緻なものへと発展させたり、既存の理論への反論を提出したりする研究。
質的研究の意義
臨床心理学は、人々の体験や語りと密接に関わる学問であり、数値化されたデータを統計的に分析する研究法だけでは限界がある。容易に数値化することのできない多様な現象を明らかにする方法として、質的研究は臨床心理学に取り入れられてると同時に、それが質的研究の意義でもある。
質的研究を行う際の留意点
質的研究を行う際には、以下のような注意すべき事柄がある。
論旨の一貫性
研究設問、問いに答えるための方法、得られた結果、論文の主張が一貫するよう、研究デザイン配慮する。
分析過程の記録と記述
分析過程を記録しておき、論文を執筆する際にそれを記述する。これは、質的研究が適切な手順を踏んで行われているかどうかの資料となる。
分析結果の適用範囲
質的研究は比較的少数のサンプルに基づいて仮説を生成するものであり、分析結果の適用範囲(一般化可能性)には限界がある。
倫理的問題
研究協力者に心理的・物理的影響を与える研究法であることを十分に認識する。研究協力者のプライバシー保護には細心の注意をはらう。
質的研究の特徴
質的研究に共通する特徴として、以下のような項目がある。
自然な状況や文脈を重視する
質的研究では、空間的文脈を重視する。環境条件を統制した実験室ではなく、できるだけ自然な状況や文脈の中で面接や観察を行います。その結果、より日常場面に近い形でデータを得ることができます。
時間的文脈を重視する
質的研究では、社会相互作用やプロセスといった時間的文脈を重視する。会話のような、社会的相互作用について検討したり、関心下の事柄を時間的経過に沿って記述・分析したりする際には、質的研究が有効です。
当事者の多様な視点を考慮する
質的研究では、当事者の体験をその人自身のことばで語ってもらうために、面接法がよく用いられる。そこから得られたデータは、研究者の想定していなかった新たな発見の要素を豊富に含んでいる。