双極性障害と抑うつ障害群は、気分障害の中に含まれていたが、DSM-5ではそれぞれ分離されている。
男女比は1:2と女性の方が多く、自殺率は男性の方が高い。罹患率は約10%と、特別な病気ではない。ただし、日本は先進国の中でも自殺率が高く、群発自殺にも注意が必要ではあるが、国や自治体が自殺防止対策に取り組んでおり、ここ数年は減少傾向にある。
目次
症状
大うつ病エピソードと躁病エピソードの2つを経験するのが双極性障で、大うつ病エピソードのみを経験する抑うつ障害である。DSM-5では、この2つを明確に区別するため、気分障害という総称を用いていない。
躁病エピソード
躁病エピソードとは、気分が高揚した状態。観念奔走や、易刺激性などが主な症状。観念奔走とは、会話などで様々なアイデアが思い浮かびまとまりがなくなること。易刺激性とは、些細なことでも怒りっぽくなることをいう。身体症状としては、睡眠困難、食欲や性欲の促進などがあげられる。
躁病エピソードの診断基準(DSM-5)
①自尊心の肥大、誇大
②睡眠欲求の減少
③普段より多弁
④観念奔走
⑤注意散漫
⑥目標指向性の活動の増加、または精神運動焦燥
⑦困った結果になる可能性が高い活動に熱中すること
うつ病エピソード
大うつ病エピソードは、気分が落ち込んだ状態。主な症状として、抑うつ、興味・関心の低下などがあげられる。そのほかには、睡眠困難、食欲や性欲の減退、疲労感などがある。
うつ病エピソードの診断基準(DSM-5)
①毎日の抑うつ気分
②興味や喜びの減退
③体重の減少or増加、食欲の減少or増加
④不眠や過眠
⑤精神運動焦燥または制止
⑥疲労感、無気力感
⑦無価値観、決断困難
⑧思考力や集中力の減退
⑨死についての反復思考
原因
原因は下記の3つがあると言われている。
脆弱性ストレスモデル
遺伝的にもつ中枢神経の脆弱性に過度なストレスが加わることにより、統合失調症が発症するという仮説。
モノアミン仮説
気分障害の原因を、神経伝達物質(セロトニン)の分泌異常だと考える。
病前性格
気分障害になりやすい病前性格として、以下の3つが挙げられている。
循環気質
クレッチマーによるもの。肥満型の体型で、社交的、陽気、活発な傾向。
執着気質
下田光造によるもの。律儀で責任感が強く、物事にのめり込んでしまう。
メランコリー親和型気質
テレンバッハによるもの。仕事面では几帳面で責任感が強く、対人関係では他人の為に尽くし、秩序と道徳を重んじる。
援助
躁病エピソードには、薬物療法を用い、大うつ病エピソードには、休養、薬物療法、認知行動療法が有効であると言われている。
罹患してることがわかったら
うつ病患者が勤労者または学生である場合、治療と回復に必要な”脳(心)の休息”を確保するために、休職または、休学を検討する。うつ病の重症度が高い場合、不可避であるが、重症度が低い場合、必ずしも「休職=ストレス軽減」ではないことを考慮する。(日本うつ病学会ガイドラインより)
予後
予後を伝える際には配慮が必要で、過度に経過を楽観視させるような説明は「薬を飲んで、休んでいればいい」というような誤解をもたらしかねない。周囲のサポートを受け入れることや、生活上の工夫、段階的なリハビリが必要である旨は理解してもらう。したがって、症状が改善し活動量が上がってきからといって、以前と同じ生活ができるというわけではない。(日本うつ病学会ガイドラインより)