高次脳機能障害と発達障害の違いについてまとめています。
症状などにも違いがありますが、発症原因に注目すると、発達障害は、先天的な脳の機能障害、高次脳機能障害は、後天的な脳の機能障害と考えるとわかりやすい。ただし、発達障害については、明らかにされていない部分も多く、完全に先天的とは言えないのが発達障害の難しいところです。
目次
発達障害とは
”発達障害”とは、幼児期から主に、認知や行動面で発達遅れが見られることを示す。”発達障害”は総称的な言葉であり、大まかに下記の3つに区分される。
①知的障害
②自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)
③特異的達障害(LD/ADHD)
知的障害とは?
知的障害とは、知的機能および、適応行動の双方の明らかな制約によって特徴付けられる能力障害をいう。18歳までに、生じると定義されており、現在は、知能検査の結果(知能指数=IQ)を持って”知能”の指標とし、これが70未満の場合に知的障害と判定するのが一般的。
自閉症スペクトラム障害とは?
自閉症スペクトラムとは、、複数の状況でコミュニケーションや対人的相互反応における持続的な欠陥を特徴とする障害。この言葉も概念的であり、細かく分類すると下記の4つに区分される。
自閉性障害(自閉症)
下記の3つの行動特徴が3歳ごろまでに顕著にあらわれ、知的障害を伴うことが多い。伴わない場合は、高次脳機能障害と区別される。
アスペルガー障害
コミュニケーションの障害が少なく、知的障害や言語障害を伴わない。
レット障害
女児のみに発症する。4歳ごろに頭部の成長が減速し、重度の精神遅滞と自閉症傾向をもつ。(※dsm5より除外)
小児期崩壊性障害
3歳以降に正常発達が停止し退行する。
共通する3つの行動特徴
そして、これらの障害には、下記の通り3つの行動特徴がある。
①社会的相互作用の障害→他者と目を合わせることができない
②コミュニケーションの障害→会話継続の困難
③想像力の障害→習慣行動への異常なこだわりがある
特異的発達障害(LD/ADHD)
最後に、特異性発達障害について。
”特異的発達障害”とは、全般的な機能や能力は年齢相応であるが、特定の機能や能力に困難を示す障害のことをいう。具体的な症状としては、LD(Learning Disorder)とADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)がある。
原因
これら”発達障害”の原因は、先天的な脳の機能障害と言われている。過去には、親の養育態度が原因であると言われていた時代もあるようだが、それは無関係であるいうことが現在では知られている。
介入・援助
知的障害に対するケアは、育児支援やレスパイトにより家族の助けが重要。また、知的障害では、劣等感を感じることも多いため、本人がそれに対処しきれない時は薬物治療の必要もある。
自閉症スペクトラムにおいては、療養が基本。自閉症児が生活しやすい環境を整えるとともに、適応能力を高めることで、困難を軽減する。心理療法は行動療法的アプローチが基本となるが、行動特性からいじめの対象にもされやすいため、気分障害や不安障害などの二次的な問題にも注意する。また、TEACCHという個別支援プログラムでは、言語ではなく、絵を使い理解を促進する工夫があり、自閉症児の支援に一役買っている。
特異性発達障害(LD/ADHD)では、薬物療法と行動療法が有効である。また、LDとADHDも、日常生活で失敗が多く、劣等感を抱きやすいので注意が必要。故に、親への心理教育や、コンサルテーション、特別支援教室などを積極的に行うことが望ましいとされる。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、緻密な情報処理がうまくいかなることにより、記憶・注意・言語・感情などの機能に障害を残す状態。
身体上の障害とは異なり表面的には目立たない点、本人も意識しにくいため理解されにくい点、診察場面よりも日常生活で出現しやすい点が特徴としてあげられる。
原因
脳卒中や交通事故などによる脳の損傷が原因。8割が脳卒中によるもので、1割が交通事故などの脳損傷によるもの。つまり、高次脳機能障害は、後天性の脳損傷の障害である。
分類
高次脳機能障害の下位分類には、失認症(半側空間無視・身体失認)、失行症、注意障害、遂行機能障害、失語症、などがある。
失認症
失認症とは、「ある感覚を介して対象物を認知することの障害」をいう。感覚障害や意識障害がないにも関わらず、視覚や聴覚、触覚などのうち1つの感覚から入力された情報だけでは対象の物を認識できなくなる。
失認症(反側身体失認)
身体失認は、主に、脳の右半球を損傷することによって左側に生じる。具体的には、以下の様な症状が見られた場合は、身体失認が疑われる。
(例)麻痺してる手足を他人の物だと思ったり、動くと主張する。
失認症(半空間無視)
左右どちらか一方への意識が向きにくく、人や物、起こっている事柄に気づかないことがある。ひどい症状になると、完全に見落としてしまう。
(例)移動してる時に、物や人にぶつかったり、つまずく傾向が見られる。
失行症
手足は動かせるが、意図した操作や指示された動作が行えないため、ジェスチャーや日常生活の簡単な動作を行うことが難しくなる。
失効症と診断されるためには、指示された内容が理解できていること、指示内容を実行する側の上肢に運動障害や感覚障害がないことが条件になる。
具体的には以下の様な症状が見られた時に、失効症が疑われる。
(例)簡単な動作や、習慣的な動作(”バイバイ”)ができない。
(例)服をうまくきることができず、上着の袖口から頭を通そうとしてしまう。
注意障害
注意や集中力が低下するために、活動を続けられる力や(持続性注意障害)、多数の中から必要なことを選ぶ力(選択性注意障害)、同時にいくつかのことに注意を向けることが難しくなる(容量性注意障害)。
(例)簡単なミスが多い
(例)歩きながら会話ができない、または壁にぶつかる
遂行機能障害
生活をする上で必要な情報処理を整理、計画、処理していく一連の作業が困難になる。
具体的には以下の様な症状がある。
(例)計画通りに実行できない。
何時にどこで?の約束を実行しようとする時、どのくらい前に家を出るのか、交通手段はどれを使うと早いのかの判断がうまくできない。
失語症
話す、聞く、読む、書く、4つの側面全てが障害される。
失語症は、前頭葉のブローカ野の損傷によって生じる運動性失語と、側頭葉のウェルニッケ野の損傷によって生じる感覚性失語に分類される。
運動性失語(ブローカ失語)は、言語を理解しているが、発音や流暢さに困難を示す状態で、感覚性失語(ウェルニッケ失語)は、逆に、発音や流暢さは問題ないが、言語理解に困難を示す状態。
(例)言いたい言葉と異なる言葉を発話する
→”おかず”を”おずか”と言ってしまう。
(例)相手の話してる言葉が理解できない
→”ラーメンって何?
社会的行動障害
行動や言動、感情をその場の状況に合わせてコントロールできなくなる障害。
(例)依存症・退行
子供に戻ったようになり、すぐ人に頼る。自分で判断ができない・
(例)共感性の低下
相手の立場や気持ちを考え思いやることができない。
記憶障害
事故や病気の前に経験したことが思い出せなくなったり、新しい経験や情報を覚えられなくなった状態をいう。
(例)新しいことが覚えられない、同じことを何度も聞く、物の置き場所を忘れるなど。
地誌的障害
地誌・場所に関してのみの障害で、よく知っているはずの道で迷ったり、地図を見て道順を理解することが難しいのは、地誌的障害である。