この記事では、ポジティブ心理学感情の機能をあらわした「拡張-形成理論」についてまとめてます。
結論~拡張-形成理論とは~
結論から言うと、拡張-形成理論とは、ポジティブ感情が人間に良い影響を与えるサイクルを示した理論です。具体的には、以下の3つの良い影響があります。
- ポジティブ感情は、思考や行動の幅を広げてくれる(拡張)
- ポジティブ感情は、スキルや人間関係などをうみだしてくれる(形成)
- ポジティブ感情は、ネガティブな影響を和らげる力を持っている(元に戻す)
拡張-形成理論のこれら2つの命題──ポジティブ感情が気づきを拡張するということ、ポジティブ感情が個人的資源を形成するということ
(引用:ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス しあわせな人生のための7つの基本p41より)
上記の引用は、「拡張」と「形成」についてですね。
それに対して、「元に戻す」という影響の根拠は以下です。
拡張-形成理論の3番目の命題は、ポジティブ感情は、ネガティブ感情の心理生理的結果を元に戻す(undo)効果がある、という主張だ。
(引用:ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス しあわせな人生のための7つの基本p42より)
そして、この拡張-形成理論を集約したのが以下です。
【ポジティブさの連鎖=心のすこやかさ】
— 認知行動療法をわかりやすく (@Ryo_lifehack) September 26, 2024
※慈悲の瞑想は、マインドフルネスの1種です
①自分に思いやりを向ける
②愛する人にも思いやりを向ける
③知人や他人にも思いやりを向ける pic.twitter.com/UvPFpBS1ZD
ここまでの話を踏まえて、詳細をみていくことにします。
拡張と形成について
では、続いて拡張と形成についての背景にある以下の2つの概念についての理解を深めたいと思います。
- ポジティビティオフセット
- ネガティビティバイアス
これらの2つの概念から、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率を、3:1にすることで、我々人間は生きることへの充実感が保たれるのだそうです。
(a)ポジティビティオフセット(positivity offset):これは、ヒトの体験は、元来ややポジティブな傾向寄りになっているという観察結果(Cacioppo, Gardner, & Berntson, 1999)や、実際、ヒトが普通に機能しているときにはポジティビティ比が2:1になっているという観察結果(Schwartz et al., 2002)のことを指す。
(引用:ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス しあわせな人生のための7つの基本pp41-42より)
このあたりの記述によると、どうやら、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率は、「1:1」つまり、半々だと、ネガティブ感情に侵食されてしまうのだということです。
そして、この比率が「3:1以上」になると、「拡張-形成理論」によるポジティブ感情の影響が動き出すと考えられています。
普通に生活できてる時の状態って
— 認知行動療法をわかりやすく (@Ryo_lifehack) October 15, 2024
「ポジティブ感情とネガティブ感情の割合」=「1:1」
じゃなかったんですね
意外 pic.twitter.com/IDV0A15PEy
良いことは、すぐ忘れるけど、悪いことは、いつまでも覚えてるみたいなそんな話なのでしょうね。
誰が言い出したのか知りませんが、直感的な発言を裏付ける1つの根拠ですね。
(b) ネガティビティバイアス(negativity bias):これはしばしば「悪いものは良いものより強い」(Baumeister, Bratslavsky, Finkenauer & Vohs, 2001)という表現でまとめられるが、ネガティブ感情の強さを緩和するためには、ポジティブ感情はそれよりも多くないといけないということである。
(引用:ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス しあわせな人生のための7つの基本p42より)
「元に戻す」効果について
拡張-形成理論の3つ目の効果ですね。
もしポジティブ感情がウェルビーイングに大きな影響を与えるのであれば、ポジティブ感情がレジリエンス(すなわち逆境に適応し、うまく対処する能力)を促進するということにもなるだろう (Folkman & Moskowitz, 2000)。レジリエンスを持つ人が逆境から回復し、心臓-血管系の反応を元に戻し、うつ症状の発現を予防し、持続的幸福を持ち続ける能力が高いのは、ポジティブ感情の状態にある頻度が高いからということで説明できる
(引用:ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス しあわせな人生のための7つの基本pp43,7-12行目より)
この効果は、次のような研究によって示唆されています。

ポジティブ感情を継続的に生み出すための介入
さて、これで、「拡張-形成理論」について、さまざまな実証研究から、ポジティブ感情が多くの良い影響をもたらすということが示されてきました。
では、いかにしてポジティブ感情を経験させる必要があるのか?
という点が、問題になってくるわけです。
そのために、心理学では、「マインドフルネス」を取り上げています。
慈愛の瞑想は、ポジティブ感情を日々体験することを増加させる目的で選ばれた介入法である。この、継時的な変化を追う研究では、ウェイティングリストに載せただけの対照群と比較して、7週間の慈愛の瞑想にランダムに割り付けられた群では、時間が経つにつれて、ポジティブ感情の増大が認められた。7週間経過後、慈愛の瞑想によってポジティブ感情を引き起こすように訓練された実験参加者において、瞑想に費やされた時間に対して生じるポジティブ感情が、300%増大するという効果が認められた。つまり、実験参加者が慈愛の瞑想の実践に時間を費やせば費やすほど、ポジティブ感情の体験が強まったのである。
(引用:ポジティブ心理学,ACT,マインドフルネス しあわせな人生のための7つの基本pp40–41より)
まとめ
最後に、拡張-形成理論についてまとめておきます。
- 拡張-形成理論とは、ポジティブ感情が人間に良い影響を与えるサイクルを示した理論のこと
- 拡張形成理論には、3つの効果がある。
- 1つめは、思考や行動の幅を広げてくれる(拡張)
- 2つめは、スキルや人間関係などをうみだしてくれる(形成)
- 3つめは、ネガティブな影響を和らげる力を持っている(元に戻す)
- 慈愛の瞑想を用いた介入では、持続的にポジティブ感情を生み出すことが示されている。
コメント